誰にもわからない気功治療家の苦悩

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気功治療家の孤独

気功治療家の道に入って19年目になりました。
会社を辞め、独立開業した時は、「石の上にも3年」と3年続けるところを目標に頑張りました。
それが過ぎると10年という節目を目指し、走っていました。
おかげさまでそれも無事超えることができました。

今はその倍近くの年月が経っています。

この道に入った頃と比べ、気のことを遥かに深く体感できるようになりました。
それはお客様の気を感じ、原因を特定できる能力が伸びたので、大変ありがたいことです。

しかし、一方、気功治療でお客様の邪気を被ることが昔より格段に増えました。
感じる能力が上がるということは、気(エネルギー)が自分に入って来ることにもなります。
これは私の体質でしょう。
お客様の邪気(ネガティブな感情、カルマ・因縁、霊障など)が私の身体に入り、そこで浄化されて抜けていく感覚があります。
昔はなかったのに、そのような感覚が次第に育ってきました。
あさりを澱んだ水槽に入れると、あさりは不浄な海水を吸い込み浄化して吐き出します。
その結果、水槽の水はキレイになるのです。
私は自分自身をまるであさりのようだと思います。

お客様の邪気が入って来ること、そしてそれがしばらく残ることは大変苦しいことです。
一日の気功治療が終わって、その後2時間〜3時間かけて夜の店内で浄化します。
それが終わって店を出るのはたいてい日付が変わってからになります。
誰もいない夜の店内で孤独に自分の邪気を浄化していく作業は、どこまでも苦しく厳しいものです。
6階の窓の外は2車線道路で、遥か先まで眺めることができますが、クルマや人の影もなく夜の静寂(しじま)が街を包み込んでいます。
もう誰もいないな・・・と孤独を感じるひと時です。
私の苦しみや苦悩は誰にもわからないでしょう。

邪気は簡単に抜けてくれないのです。
生霊になるとそれはそれは強烈にへばりつき絡みつき剝がれていきません。
人のネガティブな感情が強くなると、そのように醜いエネルギーと化します。

様々なマントラ(真言)を唱えて、邪気を身から剥がそうとするのですが、気力も体力も果ててヘトヘトになります。
気力・体力が尽きるのが先か、邪気が抜けるのが先か、限界まで必死に思いを込めて行をします。
浄化に時間がかかって、これが抜けなかったら一体どうなるのだろうと暗澹(あんたん)たる気持ちになることも少なくありません。
私の治療仲間には1〜3か月も邪気が抜けずに居ついて、ずっと苦しんでいるという人もいます。
私はそれ程タフではありません。
何としてもその場で邪気を抜かないと生命の危機に陥ります。
昔、知人のヒーラーが「邪気と3日間格闘していた・・・」と死線を超えたような表情で語っていて、その時は「この人は何を言っているのだろうか?」と不可解に思いましたが、その心境が今ではよくわかります。

「この気持ち悪いエネルギーか・・・」

浄化の行の時はあたかも地獄を這いまわっているかのようです。
時計の針が夜中の2時を回ってようやく邪気が抜けるということも珍しくなく、4時間以上も格闘し精も根も尽き果て、へたり込んでしまうこともあります。

「オレは寿命を削ってこの仕事をやっているのではないか?」
「そうまでしてやるべきことなのか?」

と弱気が顔を覗かせます。

自分の成したことで、自分がその責任を負うのならまだ受け入れることができるのですが、お客様の邪気を1万円そこそこの対価で負うのはまったく割に合いません。

「もうやめよう」
「もう引退しよう」
「他の仕事を探そう」

「もういいや!」

と幾度思ったことでしょうか。

なぜ自分がこんなにも他人のために苦しまなければならないのか?
本当にもう嫌だ!

と逃げたくなることは日常茶飯事です。

一体いつまでこの仕事を続けることができるのでしょうか?
一体いつまで私は生きることができるのでしょうか?
40歳代の時は、お迎えが来るのは来年か再来年か、そう先のことではないといつも死を予感して生きてきました。
一歩足を踏み外すと奈落の死の闇に堕ちてしまうような、死と背中合わせで生きてきました。

他の治療家のことはいざ知らず、私はそのような苦悩を日々感じ生きています。

それでも気功治療家を続ける理由

それ程までに辛いのに、今日まで仕事を続けているのはなぜでしょうか?
それはやはりお客様が良くなって、「ありがとうございます」と感謝の思いを伝えてくれることが何より嬉しいからです。
特に重病の方、がんの方が元気になって、感謝のお言葉をいただくと、

「本当にやってきてよかった」

と心の底から思えます。
それは私にとって無上の喜びなのです。
それまでの苦労が一瞬にして吹き飛び、五体に活力に満たされます。

あんなに辛い毎晩の邪気の浄化を忘れ、「またやってやる!」と気持ちを奮い立たせる自分を見て、「あぁ、やっぱり私は魂から治療家なんだ」と思うのです。

なかなか治らない病気、またはもう死が間近になっている病気になっている人は絶望の中にいて最上級の辛さを味わっていることでしょう。
私も邪気を被って苦しんでいる時は筆舌に尽くし難い苦しみがあるのですが、それと同等かそれ以上に苦しいに違いありません。

私のささやかな力によって、その苦しみから解放させてあげることができればこれ程嬉しいことはありません。
人生が明るくなり、希望が蘇り、また人生を前向きに歩いていこうという気力が湧いてくる歓びをお客様と分かち合いたいのです。

そのような方とあと何人めぐり合えるでしょうか?
まだ力は残っているのでしょうか?
死力を尽くして、人の命に灯を灯し、気功治療家としての余生を全うしたい・・・今はこのように思うのです。

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